週刊柏崎 第841回 日本をリセットする時
大型の台風が連続で九州をかすめるように通過しました。先週末の台風10号は過去最大級の規模と言われた伊勢湾台風に匹敵すると言われ、かなり大きな被害を与えると考えられていましたが、予め関係省庁が台風10号の脅威と早めの避難を呼びかけていたので、殆どの地域住民の安全は守ることが出来たようです。それでも数人の方が亡くなられ、行方不明者も出ています。自然災害の規模は過去の常識では考えられない位大きくなっています。アメリカのカルフォルニアでは気温が50℃を突破したりしています。もう私が知っている地球と今の地球は違ったものになっているのかも知れません。知り合いの保険屋さんが言っていましたが、火災、地震などの災害保険の掛け金が毎年のように上がっているそうです。これだけ想定外の災害が頻繁に起きていれば致し方ないことです。
まあ、それでも台風一過、週明けから日中は未だ連日35℃近くありますが、朝晩はかなり涼しくなってきまして、我が家のワンワンの散歩時の足取りも軽快です。
皆さん、お変わりなくお過ごしでしょうか。
安倍首相が辞任して新たな自民党総裁を選ぶ選挙が行われていますが、まあ誰がなっても大した変化は望めないと思っております。所見発表を見る限りですが、一番演説に熱が入っていて、しっかり己の考えを国民に訴えていたのが石破元幹事長で、原稿を見ながらの演説で一番印象が薄かったのが菅官房長官でありました。今の日本経済を考えると、景気動向指数は12か月のマイナス、将来を見渡してみても新型コロナウィルスで視界不良というのが現状です。安倍首相が提唱したアベノミクスですが、確かに良い点も悪い点も有ったと思います。アベノミクスというのは、いわゆる3本の矢「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」を掲げた日本経済を再生する政策です。金融緩和がもたらしたのが円安と株高で、恩恵を受けた人もいたでしょうが、一番得をしたのがトヨタやソニー、パナソニックなどの輸出企業です。これらの輸出大企業や富裕層が潤えば、中小企業や庶民にも恩恵が及ぶといのが「トリクルダウン」でありました。しかしながら、マイナス金利という、考えられないような低金利したものの、日本の成長率は僅か1%にも及ばないというものでした。その結果、大企業は利益が伸びたものの、それを給与や投資に回すことなく殆どを内部留保として蓄え、「トリクルダウン」ということを誰も口にしなくなったわけです。アベノミクスの一番の問題点は金融緩和にしても財政出動(公共投資)にしても殆どが大企業や富裕層に向けた政策であったことです。本来であれば国内総生産(GDP)の60%を占める個人消費こそがアベノミクスがターゲットにしなければならなかったと私は思います。7年8か月の安倍政権下、消費税を5%から10%まで2回に渡って上げたことが、その個人消費を奈落の底に突き落としたと言っても過言では無いと思いますね。アベノミクスの金融緩和で支えた日本の輸出というのは実はGDPで15%しか有りません。GDPの60%の個人消費と15%の輸出、どちらを活性化したら日本の景気が良くなるか、誰でも分かるでしょう。ただ今迄の常識として、金利を下げることは個人消費を喚起するのに役立っていたのです。例えば、マイホームを買うとかマイカーなど高額のものはローンで買う人が多いと思いますが、当然金融緩和によってローン金利は低くなります。現在はこのような金融緩和が消費喚起に効かなくなっています。その理由は雇用形態の変化、いわゆる終身雇用、年功序列の崩壊です。私が大学を出て証券会社に入社したのが正にバブルの始まり頃でした。当時、こんな私も入社した企業で偉くなって定年まで働き、安定した生活を送るものだと考えていました。退職するといえば正にドロップアウト、落ちこぼれであったのです。ですから私の上司は皆、ローンで車を買い、また長期ローンを組んで家を買いました。そんな借金をしても終身雇用と年功序列による安定した収入が見込めていたから誰もそれに不安を持つことは無かったのです。アベノミクスで雇用が400万人増大したといいますが、その多くはパートタイマーや非正規雇用であります。今や正規雇用社員だっていつ非正規社員に切り替えられるか分からない時代、どんなに金利が安いからと言って借金して何かを買う気になるでしょうか。明日の生活がするどうなるか予測がつかないのです、何年も先のことなど考えられる時代では有りません。
消費行動や消費税の利率などよく外国と比較されますが、確かに日本には、外国の経験則が通用しませんね。あの有名な経済学者のポール、クルーグマン先生も「それは日本特有の何らかのファンダメンタルズがあるのではないでしょうか。」と語っています。私の個人の考えとしては日本人には消費税が本当に合わないではないかと思っております。個人消費を喚起するには、その消費税を無くす、もしくは下げることが一番確実です。今や、アベノミクスで日銀や個人年金の莫大な資金が株式市場や不動産投信に投入され、どうやってその資金を市場から回収するか大きな問題になりつつあります。その意味でも、石破氏が提唱したグレイトリセットはいずれ日本が必ず直面する課題であります。菅氏が言うアベノミクスを踏襲することにしても、今の時代に即応するようにアップデイトしたものでなければならないでしょう。日本が衰退した大きい原因が確固たる成長戦略が無かったことです。GAFAと呼ばれる「グーグル」「アマゾン」「フェイスブック」「アップル」のような新興のIT企業が日本には生まれてこないのです。日本には規制ばかりで新しい需要を生み出す社会インフラが整っていないのです。今の若者、決して個人的なポテンシャルは劣っていないと思います。要はやる気が有る人達のアイデア、ビジネスモデルに対し国が資金面などバックアップ体制を整えて応援するかです。今の日本は過去の遺産で何とか食い繋いでいるだけで、このままでは間違いなく取り残されていくでしょう。