週刊柏﨑 第516回_とりあえず半沢直樹終了

急速に涼しくなってきました。朝晩の犬の散歩には何かをはおらなくては寒い程です。毎週のように台風が来ているような感じがしますが、今来ている台風は、どうやら日本列島を直撃しないようなので、やれやれであります。ここのところの気温の変化で体調を崩す方が増えていることを以前にこのコラムで書きましたが、この状態をなんでも「秋バテ」というそうであります。秋というのは一年を通して一番過ごし易い季節であるのですが、夏の軌道を逸したような暑さの為に、余りの寒暖差に体が付いていかないというのが原因であると思われます。ただ私の様な年寄りからみると、今の日本人、軟弱になったとしか言いようがありませんな。エアコンや食生活の乱れなどの影響で本来私達が持っている免疫力や抵抗力がかなり低下しているのではないでしょうか。

クロワールシリーズの商品説明で厳しい環境下で育った植物の力は強いというお話をするのですが、人間も同じで、余りに快適な生活環境になじむことによって、確実に体力や抵抗力は落ちているような気がします。かといって現在が昔より暮らし易いという事では無く、今はストレスやなんやら頭が痛い事は沢山ありますけどね。

皆さん、お変わりなくお過ごしでしょうか。

テレビドラマの半沢直樹の最終回が放映され、関東、関西圏での視聴率が42パーセントを超えて過去最高を記録したそうであります。ドラマを放映しているTBSは数日前から「半沢直樹最終回まであと50時間」などというオリンピックも真っ青な番宣を繰り返し流していましたし、少し異常な入れ込みようでありましたが、20パーセントの視聴率を取れれば大成功という今のテレビ事情を鑑みれば、まあうなずけることです。最終回、半沢は親の敵である銀行の役員に100倍返しの復讐を遂げ、意気揚々と自分を買ってくれた頭取からの人事の内示を受けるのですが、意に反して子会社への出向を言い渡されるという何か釈然としないラストシーンで終わる訳であります。

確かに、誰が見たって取締役会での半沢の執った行動は明らかにやり過ぎであったし、上役として半沢を部下にした時、かなり仕事がやりにくいと考えるでしょう。とすれば、この人事はまあ致し方ないと思いますが、本来であれば、あの訳の分からない銀行内で勧善懲悪を貫いてきたドラマの内容から見れば納得いかない終わり方であります。まあ、これだけ人気のドラマでありますから、当然続編や映画化という思惑があるでしょうから、あの驚きから怒りに変わる半沢の表情がこれは最後では無いよと言っているのでしょう。

私から見れば、あの最後の頭取のやり方こそが本当の銀行の姿であり、それまでの半沢直樹というドラマが全てフィクションであるということなんです。バブルを経て生き残った金融会社の役員は脛に傷を持っているあの大和田常務みたいなタイプか何のリスクも犯さず上役の顔色を伺って偉くなったその他大勢の役員のタイプが多いかもしれません。そして銀行員だけでは無く証券マンもバブルの時、会社を支えてきた有能な人間は職場を去っているのが現実であります。ただその当時やり手といわれた金融マンの仕事のやり方は、もはやコンプライアンスという名のもとに、組織からは排斥されているのです。半沢の手法というのはどちらかというと清濁併せのむという昔のやり方に近く、GNNという「義理、人情、浪花節」を貫く一昔の世代の考え方であります。だからこそこのドラマが支持されたのだと思います。ただあの香川照之演じる大和田常務はかなりの悪役感を醸し出していましたが、3000万円の迂回融資などメガバンクの実質ナンバー2がやる悪事にしてはあまりにも小さい、ケタが二桁少ないですな。また半沢から暴露される、個人の預金口座がマイナスなんてむしろ悪妻に翻弄される可哀そうな亭主という感じさえしました。最後は常務からヒラ取りへの降格というとんでもない温情人事となりましたが、うがった見方をすれば、大和田常務がしでかしたことは完全に犯罪行為であり、金融庁検査への資料隠匿等、当然中野渡頭取の引責問題までいっても不思議ではありません。ここはドラマのストーリー通り大和田常務に恩を売って、反頭取派を抑え込み、人事異動期にどこかに出向させればいいのですから、本当に食えないのは中野渡頭取であるのかもしれません。

元々、この半沢直樹、元三菱UFJ銀行員であった作家の池井戸潤氏が書いた、「オレ達バブル入行組」、「オレ達花のバブル組」という原作をドラマ化したものです。私は観ていないのですが、始め頃の半沢直樹はこの池井戸氏の原作に結構忠実であったのですが、東京本部に異動した中盤からは大分原作とは違う状況設定になっていたそうであります。TBSとして余り期待していなかったドラマが空前絶後の視聴率をたたき出したのですから、当然これからの戦略を立て直したのは間違いなく、続編や映画化のことまで考えたドラマ展開になったと思われます。普通であれば、原作と余りに違う内容になったりすると、怒ったり、文句をいう原作者が多いのですが、池井戸氏は自分の原作がこれ程面白い番組になるとは、と大人の対応をするいい人であります。

この後、半沢は第3作の「ロスジェネの逆襲」、第4作の「銀翼のイカロス」と続くのですが、最後はハッピーエンドで終わるのでしょうね。半沢は証券会社に出向するのですが、元証券マンとして、証券界はある意味、銀行と同等もしくはそれ以上の業界であると私は思っています。お金を稼ぐということを、どうしても実業でするべきという考えが日本にはまだありますが。アメリカではお金はどれも同じとして証券で稼ぐことは効率がよいという考えを持っています。実際アメリカでは投資銀行やヘッジフンドの方が、銀行より地位は高いのです。どうしても銀行が証券より上という考えが、日本で投資業務が上手くいかない原因の一つであると思います。まあ、半沢のストーリーがどうのこうの言ったらきりがないですし、純粋に半沢直樹の続編に期待したいです。テレビドラマも捨てたもんじゃないですな。

柏崎

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