週刊柏﨑 第480回_日本産業と円高円安のバランス

私が住んでいる京都も含めて、近畿地方ではこの冬、今のところ、かなりの積雪を伴うような雪は降っていません。今週始め、東京、関東地方で大雪が降りました。

実は、QVCさんにオンエアーの為に東京に出張しておりまして、余りのドカ雪に驚いてしまったのですが、本当に大都会というのは雪に弱いですね。この頃は本当に雪が少なくなったのですが、京都は以前、冬場、それは大雪が降ったものでした。ですから12月になると車のタイヤをスタッドレスに替えるのが普通でありまして、このような大雪が降っても余り混乱はきたさない訳であります。

それが東京では、車はノーマルタイヤのままで、至る所で事故を起こしているし、ハイヒールや革靴を履いた人達は雪や氷に足を取られて転倒しているのです。あの東京での混乱は決して想定外ではなく、状況を認識していなかったということであります。あの大雪の前日、大学の友人のお父上が亡くなられまして、大雪の為、通夜に参列することが出来ませんでした。

心から、ご冥福をお祈り申し上げます。

私の父親が亡くなった時も、東京で大雪が降ったことを思い出しました。

また阪神大震災から今週で18年目が経ちました。

この3月は地下鉄サリン事件からやはり18年であります。なぜこんなことを書くかといいますと、実はその18年前の3月に息子が生れたのです。その息子も今年は受験生であります。多くの方が犠牲になり、今だに悲しい記憶は鮮明なままですが、新しい命も確実に成長している訳であります。精一杯生きてほしいものです。皆さん、お元気でお過ごしでしょうか。

ANAやJALが導入した新型の旅客機ボーイング787のトラブルが止まりません。去年からバッテリーから出火したり、燃料漏れ、ブレーキの不具合、エンジンからのオイル漏れなど、もはや安心して乗ることは出来ない程です。16日には、ANA692便がコクピットから白煙を上げ、高松空港に緊急着陸しました。それを受けて、ANA、JALの両社は予定していたボーイング787の全便の欠航決めた訳であります。当然といえば当然の話で、処置が遅い位であります。例えが極端でありますが、通販であれば、返品はもちろんのこと、損害賠償ものです。多分返品不可っぽいですけれど。これがアメリカの会社であれば、間違いなくボーイング社は巨額の損害賠償請求をされると思いますが、はたしてANAとJALの両社は半分アメリカの国営企業のようなボーイングを訴えるのでしょうか。それでなくとも、ボーイング787は機体や両翼、エンジンの部品、バッテリー部分の電池に至るまで。35パーセントの部品が日本製であります。日本側が全く訴えを起こさず、逆にボーイングが日本の部品提供会社を訴えたら、笑っちゃいますけどね。

ちなみに、これら部品の供給会社の株価はこのところの上昇相場にも拘わらず、売りたたかれております。さて、自民党に政権が代わりまして、円相場がそれまでの円高から円安基調になり、1ドル約80円から90円程度に円が下落した訳であります(ドルは上昇)。ここのところの円安基調というのは、はたして日本のためにプラスになるのでしょうか。新聞などでは円安が企業収益を押し上げているとして、キャノンやトヨタなどの日本の代表的輸出企業を例に挙げ、円安のメリットを書いています。その反面、ガソリンや灯油などの燃料や消費財が値上がりして、家計に影を落としています。この先小麦やとうもろこしなども上がることから、パンや麺類、肉、魚類など食品全般にも価格上昇の影響が出そうであります。

多分、電気やガスなどの公共料金もまた値上げするでしょう。前々からこのコラムで書いてきましたが、これが政府のいうところのインフレ政策であります。食品や燃料、公共料金などの値上げは、確実に我々庶民の生活を直撃します。円が安くなって潤うのが輸出産業なのですが、実は日本の全産業売上高の内、輸出企業の売上高はわずか15パーセント程度しかありません。日本を輸出貿易国と思っている方が多いと思いますが、現実は日本は内需国家であるのです。パナソニックやシャープ、ソニーなどの巨額赤字が去年クローズアップされました。確かに円高によって、韓国や中国の企業にテレビなどの価格競争で敗れたことも一因であります。が、それよりも後ろから迫ってくる、外国企業の実力を見抜けなかった、これら大手企業の戦略ミスが衰退の大きな原因であると思います。

トヨタのような、円高でも世界一の車の販売数を可能にする企業もあるのですから。円安になって輸出企業が儲かるのは間違いないところでありますが、この15パーセントの規模しかない輸出企業が、日本の景気を支えられる訳がないのは誰でも解ると思います。ですから行き過ぎた円高もいけませんが、輸入物価が上がり、公共料金が上がり、住宅ローンなどの金利が上がる、行き過ぎた円安は避けなくならないことであります。不動産や株が上がるミニバブルも、結局得をするのは資産を持っているお金持ちや大手企業、銀行であるのです。それに、円安によって石油や天然ガスの値段が上がれば、せっかく盛り上がってきた脱原発議論も下火になるのは明白であります。

不思議に思うのが、誰がこんなに円を売っているかであります。多分ヘッジファンドなどの投機筋にはもはやそんな力はないですし、もちろん個人投資家などには絶対無理です。確かに今まで一本調子に円高であったのですから日柄的には何かのきっかけで反転していいし、値段的にも100円位まであってもおかしくありません。この円を売っている正体次第で、円相場は大きく変化するかもしれません。輸出企業の実需や予約であるのなら、多分再び円高になってくるだろうし、もっと違う、例えば各国の中央銀行などが協調していたりしたら、大きく根底から基調が変わるということです。為替相場というのは、本来国の通信簿であるべきで、国が一生懸命努力して国を運営した結果が国の通貨の価値となるべきなのです。

為替相場は美人コンテストと一緒という人がいますが、どうみても今だったら日本が一番綺麗だと思うのですが。

柏崎

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